不妊治療
不妊症について

不妊症は、「生殖年齢に達したカップルが通常の性生活を送り、避妊をしていないのに2年が経過しても妊娠しない」という状態です。原因は数え切れないほどありますが、大きく分けると、主な原因が女性にあるケースと、男性にあるケースがあります。不妊症が疑われるときに、女性のみが受診されることも多いのですが、実際には男性に原因があるケースも少なくありません。
そのため、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが原則となります。但し、検査を躊躇される男性の方もいらっしゃいますので、当院では女性の方のみでも不妊症の検査などに対応いたします。
不妊症の検査
不妊症が疑われるときは、必要に応じて月経中ホルモン検査、子宮卵管造影、フーナーテスト、黄体ホルモン検査、精液検査などを実施します。このうち月経中ホルモン検査は、月経開始後2~5日目に行います。卵巣の機能に関係するホルモンを採血し、ホルモンのバランスに異常がないかどうかをチェックします。これにより、ホルモンバランスの異常や卵巣の予備機能などを知ることができます。
子宮卵管造影は、月経開始後6~10日目に行います。卵管が詰まっていると不妊症の原因となるので、この状態に陥っていないか確認します。なお、クラミジア感染症の患者さまに卵管造影を行うと、クラミジア菌が卵管炎の原因になることがあります。そのため、卵管造影の前にクラミジアの有無を調べます。
フーナーテストは、子宮頸管粘液の中の精子の数と動きを調べる検査です。子宮内に十分な精子が侵入しているかどうかを予測することができます。排卵日の深夜または早朝に夫婦生活をして翌日の朝一番で受診していただき、頸管粘液中に運動している精子がいるかどうかを調べる検査です。粘液中に精子が確認できないときは、無精子症や抗精子抗体、子宮頸管炎などの可能性があります。
黄体ホルモン検査は、排卵1週間後に採血して行います。通常は排卵に伴って卵巣から黄体ホルモンが分泌され、受精卵が着床しやすい状態に整えられます。このホルモンが少ない方の場合、不妊症の原因となりますので、黄体ホルモン補充療法などを検討します。
精液検査は、男性不妊症を調べるための基本的な検査です。精液の量と数、運動率などを調べます。精液検査は不妊治療を行う上では重要ですが、フーナーテストが良好な場合は省略することができます。
タイミング療法
不妊症治療には幾つかの方法がありますが、最も基本となるのがタイミング療法です。基礎体温表や超音波検査で排卵日を予測し、妊娠の可能性が最も高い時期に夫婦生活を行う方法です。不妊治療と言うと人工授精や体外受精などを思い浮かべがちですが、不妊検査で目立った原因が無い場合、タイミング療法で妊娠するケースがよくあります。
具体的には、超音波検査で卵胞の大きさを計測し、排卵日を予測します。排卵予測日の2~3日前にご来院ください。目安としては、月経が28~30日周期の場合、月経開始後12~14日頃になります。そして、排卵予測日に性交をします。その後、妊娠反応が確認できないときは、タイミング療法を繰り返します。通常は6か月~1年ほど続けますが、ご希望により2~3か月限定の場合もあれば、1年半続けることもあります。
その他の不妊症治療
その他の不妊症治療としては、排卵誘発法、人工授精などがあります。このうち排卵誘発法はタイミング療法のひとつですが、排卵誘発剤の内服や注射によって卵巣を刺激し、排卵を起こさせます。排卵誘発剤は大きく分けると、卵子を育てる薬と排卵を促進させる薬の二種類に分けられます。排卵誘発法は、排卵障害がある場合に限らず、原因不明の不妊などに対しても有効なため、不妊治療には欠かせない治療法と言えます。
人工授精とは、洗浄した精子を子宮の中に送り込む治療法です。タイミング療法との相違点は、精子が腟に入るか、子宮に入るかというところです。精子が女性の体内に進入するプロセスは通常の性行為と異なりますが、その後の受精と着床の流れについては自然妊娠と同様です。不妊検査で精子の数が少ない、精子の運動率が低い、頸管粘液が少ない、といった場合に人工授精が検討されます。